最後の物たちの国で

最後の物たちの国で (白水Uブックス―海外小説の誘惑)

最後の物たちの国で (白水Uブックス―海外小説の誘惑)

銀座教文館の2階で、海外文学フェアをやっていた。新旧いろいろ、見覚えのあるタイトルがいくつかあったので、眺めているだけでもずいぶん楽しめる。
数年前にハードカバーで買ったものが文庫になっていたり、そういえば買った覚えはあるけど読んでいない本だったり、確かに読んだのだけれども、内容をあんまり覚えていなかったり、いやいや、これはしかと覚えているぞよと手に取ってみたりして、なんだか懐かしい友人に会ったような気分。ご親切にこれだけ新旧いろいろ作家別に並んでいると、本屋というより、図書館にいる雰囲気に近い。

そのなかでも柴田元幸訳のポール・オースターは確かに減っている形跡があり(売れてる本があきらかというのも、また面白い)、手にする機会がなかった作品を読む機会に恵まれる。

小学生の時に読んだ星新一ショートショートで、タイトルは失念したが、オニギリをひとつ、多くのひとが奪い合うというシュールな話があり、最後の梅干の種ひとつまで人々が争って、最後は想像を絶するくらいわけがわからなくなるという内容で、個人的には『ボッコちゃん』より衝撃的な作品だったのだが、このオースターのこの本を手にした時、そんなことを思い出した。

途方も無い世界の匂いがする。はまると、しばらく、抜け出せないような。

しかしこれはきっと現代の寓話。今どこかで起こりうる現実。

購入書店:銀座教文館 ブックカバーは青