『昨日』アゴタ・クリストフ(早川書房)

avril2004-07-01


もし自分の人生に影響を与えた本を挙げるとすれば、その中の一冊となるであろう本。


主人公は危険を冒しての亡命したものの、手に入れたのは中立国家での単調な労働。それは永遠に続くのかもしれない絶望。かつての幼馴染に対する、執着とも言える恋慕。非常に暗いストーリーだが、なぜかそこに希望が見える。


ハンガリーからスイスに亡命した作者の人生に重ね合わせずにはいられない。巻末に、著者来日時の講演内容が記載されていて、それがまた興味深い。これだけでも非常に価値がある文章。

もはや帰ることはない祖国、自国語が薄れ、子供が外国語を話すようになる。焦燥感から大学でフランス語を学ぶ。それしか選択の余地が無い。単調な労働は続く。子供の世話をしてからタイプライターに向かう夜。小説を書き始める。それは誰にも読まれないかもしれない。果たして、誰にも読まれない文章を書きつづけようと思うだろうか?


初めて読んだのはいつか昔、図書館で。それからしばらく書くことについて考えていた。少なくとも自分には、インターネットというインフラが整っている日本に住んでいる。その現実を、改めて自覚した。

所有したいと思っていたが、いままで買うタイミングがなかった。出版されたのはずいぶんと前だが、どうやら映画化になるらしく、ささやかに平積みにされていた。

そんな青山ブックセンターが好きですよ。


買ったところ:青山ブックセンター 新宿ルミネ2店

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ABC、倒産だそうです。泣けてきます……。(040716)
これが最後の購入本となりました。