もののはずみ

もののはずみ

もののはずみ

購入書店:ブックファースト新宿ルミネ2店

なんとなく、恥ずかしかった。こういう趣味の本を読む自分というのに酔っている感覚で本を買っているような気がして、後ろめたい気分になるのは何故だろう。ちがうちがう、そうじゃないんだけどさ、と言い訳したくなる。でも読んでみたら、素直に面白かった。そんなに気取る必要はなかったのだ。

クリニャンクールの蚤の市で骨董探し? いやそんな崇高なもんじゃなくて。文房具店の隅になぜか置かれている、古ぼけた秤なんかに惹かれる気持ち。日常的なパリの風景がふんわりと思い起こされるような描写。
堀江敏幸の文章はエレガントでありながら、多少分りにくい場合も多いが、この本の中ではひとつのモノに対して短いエピソードが完結しているので情景も分りやすい。興味深い物語がちりばめられていて、クフクフと笑いたくなるような暖かさがある。
出会うべくして出会うモノたち、果たしてそれは持ち帰ることになるのか、その行方は文章の中では今ひとつはっきりしないのだが、それぞれの写真があるということは、おそらく作者の身辺でつつましく寄り添っているのだろう。