世界屠畜紀行 旅をする裸の眼

世界屠畜紀行

世界屠畜紀行

ずっと気になっていたこと、でも想像したくないこと、一般的には見たくないことを、あえて興味を隠さず、純粋な好奇心でもって取材しようとする作者の姿勢に感服。そしてそれはこんなに興味深いことであったのか。
絵は妹尾河童を思い起こさせる。雑誌『散歩の達人』で下町紹介をしていそうな絵柄、しかし屠殺――ここではあえて「屠畜」という言葉で、世界中でその仕事に携わるひとの生活、その誇り、国によっては、伴う苦悩、そしてそれを見つめる作者の暖かい眼差しが親しみのもてる絵に現れている。
現場の描写も残酷に見えないのは作者の愛情が注がれているからだろうか。さし絵のふしぶしに何となく?小さなハートマークがついているのがコミカル。そしていつも肉を味わうシーンがいい。うまそう! ああ、食肉にしてくれるひと、本当にありがとう! 感謝して肉を食べたくなってくる!

レジに持っていくときにようやく値段に目がついて「お、ちょっと高いな」と思ったが、作者に敬意を表して購入。多くのひとに読まれるといいなと思う。

旅をする裸の眼

旅をする裸の眼

なんの気なしに手に取ってめくって、ええと、どういう作者なんだっけと思ったら日本人で吃驚した。てっきり翻訳書かと思った。ああなんかこの経歴はどこかで聞いたことあるけれども、芥川賞も取ってるみたいなんだけど、なぜか今までご縁がなかったようだ。
八重洲BCの1階では、棚が作られていて「今月いちおしの作家」ということになっていた。単行本すべて手に取ってちょっと覗いてみてみたが、やはり最初に手にしたこれを購入。どうして今まで機会がなかったのだろう。この言葉は、好みだ。