「21歳。醜いわたしはまだ処女だった。」



主人公は醜い女性である。自ら長い間そう思っているし、周りからそう思われていることも分かっている。ある日、新聞の三行広告に目を留める。“求む芸術写真モデル、ただし、身体に特徴のある方”。果たして、醜さは特徴となりえるのか?



自称芸術家の男が彼女を求めるのは愛情ではなく、その醜さという特殊性からなのか。最初は写真、それから絵画、そして文章に表現は移り変わる。
男性側と女性側の声が交錯しながら物語がすすんでいく展開は、むかし買って読んだ『愛撫の手帖』を思い出されるが、この本にしてもフランス小説はセックスの描写が延々と続くものが珍しくないように感じるし、もはや自分はそういう行為自体にはそんなに興味がないのだが、それを追う人間の心理描写みたいなのには、いまだに惹かれるものがあって、その人間のどうしようもなさというのが悶絶するほど生々しく描かれており、特に中盤以降も凄まじい勢いの文章が続くのが、あっぱれ。個人的にはすごく好みの本である。


作者、お若いの。17歳でデビュー、サガンの再来と言われたプレッシャーを超えて、これが第二作。まだソルボンヌの学生ですって。参っちゃうね。
おそらく処女作がヨーロッパで話題になりすぎて、メディアにさらされた作者本人のコンプレックスから生まれた作品であることは想像に難くない。



自分が21歳の頃を思い出した。あの時、わたしは絶望していた。わたしが好きになるひとはわたしのことを好きになってくれないという現実に失望していた。